インバウンドマーケティング

企業の商品やサービスを知ってもらい広く販売できるよう、調査から宣伝まで様々な方法が用いられてきました。しかし、多様な情報が得られる現在では、旧来のアウトバウンドマーケティングのままだと、消費者から敬遠されることも多くなってきています。この記事では、時代のニーズに合わせた新しい手法「インバウンドマーケティング」の必要性や学習方法のほか、顧客から見つけてもらうポイントや導入方法をご紹介します。

インバウンドマーケティングとは

ダイレクトメールや営業をかけることで自社のサービスや商品を知ってもらうのが、「アウトバウンドマーケティング」と呼ばれる従来の戦略。それとは対照的に、顧客から見つけてもらう手法が「インバウンドマーケティング」と呼ばれています。

インバウンドマーケティングでは、自社のブログやWEBサイトで顧客が求めるコンテンツが公開され、あくまで顧客が見つけることがメインとなっています。
公開されているコンテンツは何でも良いという訳ではなく、質と量が充実していることがポイントです。そのため、商品やサービスを探している人にとって関心のある内容や、悩みを解消できるような役立つ情報を多く発信し、相手から興味を持ってもらえることに注力しましょう。

インバウンドマーケティングはなぜ必要か?

次にインバウンドマーケティングの必要性について解説していきます。
これはアウトバウンドマーケティングに見られるような「相手から消費品やサービスを紹介されること」に対して消費者がよく思っていないのも要因の一つとして考えられます。

インターネットを介し、自分が求める情報を手軽に得られるようになったため、消費者が購買に至る流れは変化しました。検索エンジンやSNSが発展に伴い、欲しい情報の検索から、気に入ったものを購入するまでのフローが一般化しつつあります。そのため、顧客側では購入前に自分で調べることが習慣となり、いきなり営業をかけられることに不信感や嫌悪感を抱くようになったのです。

つまり、これまで検索しても情報の少なかった商品やサービスも、おおよその情報を自分で得られるようになったため、インターネット上にある全ての情報がコンテンツになったと言えます。

インバウンドマーケティングのメリット

インバウンドマーケティングの特徴や必要性について解説してきましたが、実際に導入することでどういったメリットがあるのかを紹介します。

  • 低予算でもスタートできる
  • 予算をかけなくても成果を出せる場合がある
  • 情報が口コミとして広がりやすい
  • 将来の顧客(潜在顧客)に対してアプローチできる
  • 顧客から嫌われない
  • 質の高いリードが獲得できる

インバウンドマーケティングは、低予算で始められます。自社メディアに質と量が充実したコンテンツを公開するだけでなく、FacebookやTwitterなどを通じて情報を拡散すれば、雑誌やテレビといった広告も必要ありません。また、「バズる」という言葉にもあるように、ネット上にある情報の中でもユーザー達が広めてくれることもあります。これにより低予算ながら成果を出すことも不可能ではないでしょう。

さらに、顧客が知りたい情報を用意するスタンスを取るため、顧客から嫌われるリスクを軽減できるのもメリット。情報の質や量が顧客から信頼されれば、将来の顧客になり得る人にダイレクトメールなどでアプローチできます。

そして顧客から主体的に情報を取りに来るようになれば、質の高いリードが得られるようになるのです。

インバウンドマーケティングのデメリット

続いて、デメリットについて確認していきましょう。

  • 成果が出るまでに時間がかかる
  • 効果の測定が難しいケースがある
  • 継続的な情報発信が難しい場合がある

展開の方法にもよりますが、インバウンドマーケティングは成果を出すまでに時間がかかります。コンテンツを作る前に、顧客が求める情報を定めたり、検索エンジンのSEO対策を講じてコンテンツ制作の体制を整えたりと、準備から効果測定まで数ヶ月を要することも稀ではありません。

また商品やサービスに対して、「インバウンドマーケティングがどれほどの影響を与えたのか」効果測定が困難な場合もあります。低予算で始めた場合、費用対効果が悪いのか、商品・サービス自体が悪いのかを判断しきれない面も持っています。

そして、コンテンツの質と量を維持しながら、継続的に情報を発信するのが困難なことも。それは、ターゲットにどんな情報を提供するのかを考えたり、何を発信するか選定したりするのに時間を要するためです。

インバウンドマーケティングの具体的な手法

インバウンドマーケティング具体的な手法として、以下の4つのステップで進めていくことになります。

  • Attract(引き合い)
  • Convert(変換)
  • Close(顕在化)
  • Delight(感動)

ここでは、これらのステップを詳しく説明しますが、効果的なインバウンドマーケティングを実践するために、目的の設定が欠かせません。潜在ニーズへアプローチしたいのか、メディアのコンバージョンを上げたいのか、企業のブランディングをしたいのか、目的によって発信する内容や掲載先などが異なります。

潜在ニーズへアプローチする場合、現状でリーチできていない顧客を獲得するために、製品やサービスの魅力を伝えますが、製品・サービスのメインターゲットと近しいユーザーを持つメディアへの短期的な配信に効果があります。

また、コンバージョンを上げるのが目的であれば、中長期的な目線で販売経路の確保などを整備する必要があるでしょう。そして、製品やサービスよりも視点を高くし、会社のブランディングを目的とする場合もあります。その会社がどんな取り組みをしているのか、企業の社風は好印象を持てるものかといった面でコンテンツを制作・発信していくことが重要です。では、具体的な手法を以下で紹介していきます。

Attract(引き合い)

最初のステップは「Attract(引き合い)」です。興味を引く内容を発信し、潜在顧客に自社の製品やサービスを知ってもらうこと。ブログ記事やSNSなどを駆使し、サイトへの誘致を行います。

オンライン上にアップされたコンテンツは、検索エンジンによって上位で表示されるか判断されます。そのため、ターゲットの設定やキーワードの選定が注目を集めるために重要なポイント。「Attract」がうまくいけば、サイトに訪問してくれる潜在顧客を獲得できます。

Convert(変換)

サイトへの誘致をした後は、「Convert(変換)」を行います。ここではサイトに訪問した「潜在顧客」を「見込み顧客」へと変換させることが目的です。

潜在顧客を見込み顧客に変換するためには、価値のある情報・コンテンツを配信する代わりに顧客に個人情報を提供してもらうことが欠かせません。

また情報の配信には、eBookやホワイトペーパーが効果的です。制作コストも安く抑えられるほか、顧客の情報を簡単に提供してもらえます。

Close(顕在化)

「Convert(変換)」によって見込み顧客を獲得できれば、「Close(顕在化)」で商品の購入まで促しましょう。

顧客の前提は、押し売りのようなものを嫌う傾向にあるため、あくまでも自然な流れでLP(ランディングページ)を記載してください。また、個人情報や閲覧内容などから、見込み顧客ごとの課題を解決できる商品やサービスを提案しましょう。メールやマーケティングオートメーションにより、適切なタイミングでフォローすると高い効果が期待できます。

Delight(感動)

最後のステップは「Delight(感動)」です。顧客が商品やサービスを購入したとしても、感動や満足度が低ければ継続的な利益は見込めません。インバウンドマーケティングの最終目的として、商品やサービスに満足してもらうことが挙げられます。

つまり、潜在顧客から見込み顧客へと変換し、満足感を得た見込み顧客がリピーターとして継続的に購入してくれるでしょう。さらに、顧客の満足度を上げれば、口コミやSNSなどでの拡散も期待できます。インバウンドマーケティングは想定外の拡散力を持った手法なので、ぜひ実践してみてください。

インバウンドマーケティングの活用事例

様々な企業がインバウンドマーケティングを導入し、成果を出しています。ここでは、企業ごとの具体的な成功事例を挙げるほか、どういった効果が得られたのか、詳しく解説していきます。

自社に必要なポイントを考えながらそれぞれ見ていきましょう。

北欧、暮らしの道具店

北欧の食器や家具を販売する「北欧、暮らしの道具店」は、インバウンドマーケティングによって広告費用削減と売り上げの増加に成功した企業です。
インバウンドマーケティング導入前は、楽天ショップに出店し、半年間で700万円近い広告費をかけていました。しかし、オンラインショップでの収益に限界を感じ、楽天ショップから撤退。なるべく広告費をかけないECサイトとSNSの運用を行い、使用イメージの掴みやすいコンテンツを意識しました。
結果として、2019年の4月には月間で1500万PVを稼ぎ、売り上げに対する広告費の割合も1.5%ほどにまで抑えることに成功した事例です。
https://hokuohkurashi.com/

株式会社ブイキューブ

テレビ会議やウェブ会議などのサービスを展開する株式会社ブイキューブは、セールスとマーケティングを両立させています。B to Bのサービスがメインとなっていますが、顧客ニーズの調査だけでなく、商談を行うマーケティング担当者と、導入前の契約を促す営業担当者との連携が取れていないことが課題でした。インバウンドマーケティングを導入することで、訪問回数の多いユーザーに導入事例を訴求したり、個別チャットでヒアリングしたりと、ユーザー目線のサポートをすることで売り上げの増加や顧客満足度を高めていきました。同時に顧客の情報を各担当者が確認できるようになり、効果的なセールスが実現できたのです。
https://jp.vcube.com/

日本電気株式会社

NECの名で知られる日本電気株式会社は、WISDOMというオウンドメディアによって、ナーチャリングに成功した企業です。「見込み顧客」を「顧客」へとするナーチャリングですが、経営戦略やマーケティングの情報をコンテンツにしています。NEC自体の売り上げを増加させるには、顧客の意思決定の早さに早急に対応できる仕組みが必要だったため、見込み顧客との双方向コミュニケーションを実施。見込み顧客の感触を確かめてから営業へと渡すフローが、ナーチャリング成功の鍵を握っていると言える事例です。
https://jpn.nec.com/

インバウンドマーケティングが分かるおすすめの本

インバウンドマーケティングは、インターネットで調べてすぐに理解できるものではありません。必要な情報に日々触れることで理解できる部分もあるので、本でじっくりと学ぶこともおすすめです。

ここではインバウンドマーケティングを分かりやすく解説している書籍を3冊ご紹介します。

『【増補改訂版】インバウンドマーケティング』

インバウンドマーケティングのマーケティングや、セールスに関するソフトウェアを手がけるHubSpotの創設者が共著で執筆した書籍です。

WebサイトやSNSの運用に関するノウハウが凝縮されていますが、インバウンドマーケティングの基礎や仕組みが分かりやすく解説されているので、初心者にもおすすめです。

また、HubSpotのサービスに関する事例も取り上げられているので、様々な視点から学ぶことができます。一から何を始めれば良いか悩んでいる方は、本書を手引書としても良いでしょう。

  • 書籍名:【増補改訂版】インバウンドマーケティング
  • 著者名:ブライアン・ハリガン、ダーメッシュ・シャア
  • 出版社:すばる舎
  • 出版年:2017年
  • 価格:2,484円
  • 購入先URL:Amazon

『インバウンドマーケティング』

インバウンドマーケティングの導入支援を行なっている高広伯彦氏が書いた『インバウンドマーケティング』。その歴史や概念などが体系的に学べる書籍ですが、歴史的な側面だけでなく実践への手順も記載されている良書です。

新たなマーケティング手法として確立された経緯や、企業側がどのようにして導入していけば良いのかを解説。実践的な知識も充実しており、インバウンドマーケティングの大枠から、自社への導入・運用まで広く知りたい方は手に取ってみましょう。

     

  • 書籍名:インバウンドマーケティング
  • 著者名:高広伯彦
  • 出版社:SBクリエイティブ
  • 出版年:2013年
  • 価格:1,296円(Kindle版)
  • 購入先URL:Amazon

『BtoBウェブマーケティングの新しい教科書』

こちらの書籍はBtoBのマーケティングに精通している渥美 英紀氏が記した書籍です。

BtoBのマーケティングとしての考え方や価値観が詳しく書かれているほか、実際の導入にも触れています。また、toBだけでなく、toCを目的とした内容も盛り込まれているので、オウンドメディアやSNS運用の参考になります。

専門的な目線で解説されているため、企業のインバウンドマーケティングやWebの担当者が実務で利用する際にも一役買うでしょう。

  • 書籍名:BtoBウェブマーケティングの新しい教科書 営業力を飛躍させる戦略と実践
  • 著者名:渥美 英紀
  • 出版社:翔泳社
  • 出版年:2017年
  • 価格:2,138円
  • 購入先URL:Amazon

まとめ

相手に売りに行くスタンスのアウトバウンドマーケティングも、今や相手に見つけてもらうためのインバウンドマーケティングへと移り変わってきています。

これは、大手だけのチャンスではなく、中小企業にとっても大きなチャンスです。オウンドメディアやSNS運用を成功させれば大きな利益や成長が見込めるでしょう。

人の目に触れる情報を発信することは、いい加減な内容では満足してもらえません。あくまでもユーザーや顧客の目線に立ったコンテンツを発信し、お互いが満足のいく結果を目指してください。

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