データアナリストの安藤です。
美容コスメの特定ジャンルNo.1シェアのサービスで実際に行った改善事例から抜粋して、データの読み方および改善フロー(思考プロセス)について共有したいと思います。
対象となるサービスは美容コスメ系ECサイト(以降、A社サイト)です。
目次
前段 | CV数は急激に増加した後に伸び悩みはじめた
A社サイトは、マス広告を活用した大規模なプロモーションにより、流入数が急激に増加しました。
また、コンバージョン(以降、CV)数も流入数にほぼ比例する形で増加し、局所的なマーケティング施策としては大成功と言える結果になりました。
※流入とはサイトおよびページへの訪問を表す
しかし、その後流入数増加に伴ってCVR曲線は緩やかな停滞・下降傾向を見せました。
これは、流入数増加に伴う「流入の質の低下」であり、流入するユーザー層が変化したことにサイト側が対応できていなかったことが見て取れます。
さらにCV数を伸ばそうと思うと、より多くの広告費の投下が必要になる計算式になり、拡張性にも限界があるように感じられます。
プロモーションの効果を引き上げるためには、サイト流入数の増加と同時進行でサイト改善を行い、変化する流入品質に対してアジャストしていく必要があります。
ですが、A社サイトは、データを活用したサイト改善のノウハウが欠けており、有効な施策を打てていませんでした。
課題① | 商品一覧ページはCVの主力導線でありながら流入比率が低い
ユーザー行動分析を行った結果、CVするユーザーの65%は商品一覧ページ(以降、商品一覧)を経由してCVしていると判明しました。
しかし、CV比率は65%と高いにも関わらず、商品一覧へ流入するユーザーは全体の3%程度で、非常に低い状態となっています。
つまり「商品一覧」は、”CVするユーザーの大半が通過している”にも関わらず、”流入したユーザーほとんどが見ていないページ”ということです。
このことから、商品一覧へのユーザー流入比率向上による改善施策にインパクトがあり、費用対効果の高い施策である可能性が高いと考えられます。
課題② | 商品一覧への流入の70%は2つの導線から発生している
前項より、全体の3%程度のユーザーが商品一覧へ流入していることを課題としました。
では、この3%はどこから流入しているのか?
商品一覧へ流入したユーザーの直前クリックを確認すると、以下の2つの導線からの流入が70%を占めていることが判明しました。
上図の通り、両導線はファーストビューなど主力導線エリアに設置されてなく、しかもページ下部というユーザーが到達し辛いエリアに設置されていました。
最も流入数の多いTOPページですら下部にある状況で、商品一覧への流入導線環境は劣悪であるといえます。
当然ながら、現状のユーザー導線は非効率であり大きな機会損失が発生していると予想できます。
この機会損失を解消するためには、以下の条件を満たす必要があります。
- 商品一覧へ効率良く流入数を増やす
- 商品一覧があることを認識させる
施策 | グローバルナビゲーションの設置
機会損失を解消する2つの条件を満たすためには、「サイト内の共通パーツかつ固定表示」な形式の導線を用意する必要があると考えました。
※サイト内の共通パーツ:グローバルナビゲーション、フッター、メニューなど
※固定表示:フローティングバナーなど、スクロールしても表示され続ける導線
共通パーツかつ固定表示が可能なものは、「グローバルナビゲーション」か「フローティングバナー」のみになります。
一方のフローティングバナーは直接的な購入導線が既に設置されており、かつ数値が悪くない傾向です。
そのため、グローバルナビゲーションの新設を有効策として実施しました。
グローバルナビゲーションはサイト最上部に設置され、全ページにおいても使える共通導線になっているため、全てのユーザーが商品一覧の存在を認識できるでしょう。
また、固定導線という性質も有しているため、ユーザーのページスクロールの影響を受けずに、効率的な遷移が可能です。
効果測定 | 商品一覧への流入数が3.3倍になった結果、CV数が1.4倍に増加
グローバルナビゲーションの設置により、商品一覧への流入数が3.3倍へと大きく増加しました。その結果、CV数が1.4倍になり、大幅な改善が成されたといえます。
特徴的な点として、サイト内平均CVRが上昇したことが挙げられます。
一般的に考えて、商品一覧はユーザーの意思決定を直接的に刺激するページであるとは考えにくいです。
またその場合、流入数の増加に伴ってCVRは下降していくでしょう。
では、なぜサイト内平均CVRは上昇したのでしょうか?
それは、隠れたユーザーニーズを満たしことに起因するものと考えられるでしょう。
前文で述べた通り、商品一覧はCVに必要な導線ではあるが、意思決定を直接的に刺激するページではありません。
この前提と、CVRが高まる現象から考えるに、ユーザーには商品毎の対比や別商品の発見を求めて回遊したいというニーズがあるのではないだろうか、と考えられます。
このことから、本施策は商品一覧への遷移率向上を目的として行われたものの、未確認だったユーザー行動を発見することができたといえます。
問題提起 | 正しいデータ分析できてますか?
本稿では、サイト改善事例を実行フローベースで詳細にご紹介しました。そのため施策立案の一助となるレポートとは言えます。
しかし実際、分析ツールにおける数値取得の方法は非常に複雑です。
加えて、数値を取得するための環境構築についても、時間や手間の面から遥かに高難度と言えるでしょう。
これらはデータ分析を行う上で、土台となる重要な工程です。しかしその複雑性から、多くの企業がデータ分析の土台を形成しているとは言えません。
PROJECT GROUP株式会社では、今回の事例のように細かいデータ分析を行っています。
そこから抽出されたデータは、ウェブサイトのUI/コンテンツ改善は、広告戦略やカスタマーサービスの向上、さらには商品開発など、あらゆる領域でエビデンスとなりうるものです。
我々はこれまで蓄積したデータ分析のノウハウを活用し、売上に直結する効果的な施策立案を行っています。
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