Zeals×PROJECTGROUP対談
遠藤竜太 氏
株式会社Zeals 取締役/COO。
静岡県富士市出身。京都大学大学院ヒューマンインタフェース論 修了。大学では研究者を志し、人と機械のインタラクティブを学ぶ(受賞歴:HIシンポジウム優秀賞/特許申請など)。テクノロジーの社会応用に目覚め、アドテクカンパニーFreakOutに新卒入社。2017年7月よりZealsにジョイン。

田内広平
PROJECT GROUP株式会社 代表取締役。
2012年、大学卒業と同時に株式会社Project L.C.(現・PROJECT GROUP株式会社)を創業。ORBIS、品川美容外科クリニック、ビックカメラといった大手クライアントを中心にデータマーケティング/R&Dを提供。グロースハック集団として業界トップクラスの実績を持つ。ベストベンチャー100を2017/2018で連続受賞。

大きく広まるCRMの波。CRMとは何なのか。

遠藤氏と田内
田内広平今回の対談では『CRM(カスタマーリレーションシップマネジメント)』について、LINEチャットボットではお馴染みZealsの遠藤さんにお時間を頂きました。本日はよろしくお願いします。

遠藤竜太こちらこそよろしくお願いします。

田内広平ビジネスシーンでは、DXに並んで「CRM」という単語を目にする機会が増えたと思います。各方面でも「CRMとは?」といった議論がされている中、個人的に思っているのは「結局のところ、CRMはマーケティング工程の一連の流れそのものじゃないのか」ってことなんですね。

遠藤竜太確かにそうかもしれないですね。ただ世間的にはまだまだCRMの定義は曖昧で、どちらかと言うと「ユーザーコミュニケーションの文脈で認識されているのかな?」という印象を持っています。

「ユーザーコミュニケーション」と言うとメルマガやLINEのことだと捉えられがちじゃないですか。でもネット通販なら同梱品、サロンなら店舗での接客、アパレルならブランドメッセージ。こういうのもユーザーコミュニケーションの一部なんですよね。

田内広平つまり、CRM担当者はもっと広い視野を持たないといけない。それに本当の意味でのCRM担当者って「マーケティングの一連を全て把握してる人材」じゃないとおかしいですからね。

とはいえ、多くの経営者はCRMをちゃんと理解していない。それこそCRM担当者を「顧客とコミュニケーションを交わす役」ぐらいにしか考えていないのが根本的な問題だと思ってます。

本来であれば、CRMを進めるうえでCRM担当者には「広い業務領域」と「権限」を与えるべきじゃないですか。

遠藤竜太本当に、その通りですよね。

CRMの闇。「CRM」と言っておけば売れる。

田内
田内広平遠藤さんが仰るように、結局「CRM」という単語の意味が世間的にズレている気がしますね。

例えば、様々な企業が「CRMツール」を売っているわけですけど、某企業Aは毛色としてCSに寄っている。逆に某企業BのCRMツールは完全に刈り取り用ですけど、新規獲得用であってクロスセル用の機能は搭載されてない。

※CS:Customer Satisfactionの略。顧客満足のこと。

本来CRMは新規獲得、クロスセル、アップセルの全て網羅していることが大前提。更に言えばCSも少し絡んでくる。この認識がクライアントの中で共通化されてないんですよね。

ただツールベンダー側からすれば、CRMはトレンドワードだから「とりあえずCRMと言っておけば売れる」みたいな部分もあるわけじゃないですか。言い方は悪いですけど、CRMの定義がズレている方がむしろツールベンダー的には都合が良いみたいな。

遠藤竜太確かにそれはCRMの中でも、かなりグレーな部分かもしれないですね。

本来であれば、CRMは目的が先行しているはずじゃないですか。でも「ツールを導入したのでCRMやります」といったように、ツールが先行している企業もやはり見受けられます。

実際に僕たちのクライアントでもCRMツールの導入目的が曖昧な企業は多く、CRMが推進されない理由も何となく分かりますね。

CRMはツールで補完できない。

B2Bマーケティングのフロー
引用:ビジネス+IT

田内広平CRMツールにも思うところがあって、それこそCRMを「マーケティング工程の一連の流れ」と定義したとするじゃないですか。よく考えると「じゃあ、CRMツールって何をやるツールなの?」って話になると思うんですよ。

ツール導入で実現できることって効率化、もしくはサービスの拡張くらいだと思うんですよね。でも、世間的に「ツール導入がCRMの全て」みたいな認識になっている。だから「CRMは自社でやる」というような発想が生まれてくるわけですよ。

結局CRMの一部を切り取ってもあまり意味は無く、全てを網羅しなければ全体の最適化には繋がらないと思うんですよね。

遠藤竜太そうですよね。だから、繰り返しになりますけど順番が逆だと思うんですよ。

本来は「指針」と「人材」が揃った状態でCRMをやる。そしてCRMツールは事業を円滑に進めるための道具でしかない。なのに現状は「ツールがあるからCRMをやる」になっている。順番が逆だから、上手くいかなくて当然ですよね。

田内広平確かに「人材」も重要なファクターの1つですね。

知り合いの会社の話ですが、広告業界出身のマーケターをCRM担当者に任命した企業がいたんですよ。

その人の経歴的に新規獲得は得意かもしれない。しかし購入済みユーザーに対して「こちらも良い商品ですけど、もう一品どうですか?」みたいなクロスセル、F2転換のコミュニケーション経験は乏しいわけじゃないですか。

で、この足りない部分をツールは補完してくれない。結局、必要なのは人力での補完になるんですよね。

※F2転換(率):初回購入から、2回目購入に至った顧客の数や比率を表す指標のこと。

遠藤竜太本当に仰るとおりです。

うちも「新規獲得」と「既存顧客」でコミュニケーションデザイナーを分けてますからね。やはりフェーズ毎にクライアントのニーズは違いますし、思考回路とか求められるクオリティのレベルも変わってくるんですよ。

ある意味、新規開拓の営業とカスタマーサクセスの属性が全然違うのと一緒だと思います。新規獲得、F2転換、クロスセルのそれぞれに特化してる人材を配置して、それぞれの顧客に対して適切なアプローチを掛ける方がやはり上手くいきますからね。

機能ではなくシナリオが肝心。日本のチャットボット事情。

チャットボット企業カオスマップ2020
引用:Sciseed

田内広平ここでちょっと話題を変えて、CRMとも関係の深いチャットボットについて触れられたらと思います。

個人的に感じている事なんですけど、大抵のチャットボット企業は「機能部分だけを提供して、一番肝心なシナリオが作れない」と思っていたりするんですよね。

遠藤竜太ほう、何かあった感じですか?

田内広平数年前の話になるんですけど、うちの会社もチャットボット導入を検討したことがあったんですよ。

背景としては、僕らって少し複雑で高度なマーケティングをするので「受注するクライアントの条件」があったんですね。その条件に合致するクライアントを自動選別したくてチャットボットに行き着いたと。

それで当時、チャットボットを推していた企業の何社かに相談して、1回試すことになったんですね。結論、どの企業も基本的にシナリオが作れない。それこそ「ツールは提供します」「シナリオは自分で作ってください」みたいな。

まあ、でも「一応、作れないことはないですよ」みたいな企業も中にはいて作ってもらったんですよ。結局、使い物にならないシナリオが納品されるっていう。

遠藤竜太なるほど、そういう事だったんですね(笑)

田内広平そう。だから「もうこっちでシナリオは作るんで大丈夫です」みたいな(笑)

とはいえ、当然うちらもシナリオなんて作ったことがないから、コミュニケーションの流れが分からないわけですよ。

そんな感じで悪戦苦闘している最中、たまたまZealsのチャットボットを発見したんですよね。「これだよねぇ」「こういうのやってくれなきゃ困るわけよ」みたいなことを本当に感じました(笑)

まあ、繰り返しなんですけど「ツールは提供しました」「あとはよろしく!」みたいなのは本当に価値が無いと思います。それに極論を言うとエンジニアさえいればチャットボットなんて自分たちで組めるわけじゃないですか。

少なくともチャットボットでプロダクトを売り出すなら、一番肝心なシナリオは作れるようにしてもらわないと無理があると思いますね。

遠藤竜太いやぁ、本当にそうですよね。

Zealsも最初はツールベンダー。

遠藤氏
遠藤竜太Zealsは今でこそコミュニケーションデザインに重きを置いたサービスを提供していますが、最初はツールベンダーだったんですよ。

当時、うちにエンジニアしかいなかったこともありますが、チャットボットブームの波に乗って僕らもツールを作ったんですよ。そしたらブームの影響もあって、一瞬で1,000社への導入が決まったんですよね。

でもシナリオを含め、チャットボットを最後まで作り切った企業って本当にわずかしかいなかったんですよ。

冷静に考えてみれば「どういうチャットボットを作れば良いのか」みたいな答えが世間的に無かった。そんな状況でチャットボットが作れるわけがないし、至極当然のことだったんですよね。

そこからですね。僕たちが単なるツールベンダーだけではなく、コミュニケーションデザインにも重きを置いてサービスを展開するようになったのは。

田内広平なるほど、そういう背景があったんですね。

遠藤竜太それこそ方針転換した時は、僕がチャットボットの会話を泥臭く作ってたんですよ。お客さんの話を聞いて、ペルソナを作って、シナリオ設計をしてといった感じで、もう死ぬほどやっていましたよ。

田内広平ちょっと京大院卒とは思えないキャリアですね(笑)

遠藤竜太そうかもしれないです(笑)

でも、そこには価値があったし、逆にそれ無しでは成果が出ないこともよく分かりました。今では、コミュニケーションデザインのチームを拡大しています。人数で言うと50人規模ですね。

結論、田内さんの仰るとおりでチャットボットの機能部分のみを提供しても価値がない。ノウハウが必要なコミュニケーションデザイン部分がセットになって初めて価値になるって感じですね。

田内広平そうなんですよね。

「チャットボットで成果向上」も人材あっての話。

田内広平チャットボット関連で裏話があるのですが、某チャットボット企業がすごい流行って「あのツールは熱い」みたいになっていたじゃないですか。でも、そのツールで実際に成果を出せたのはアフィリエイト業界のトップにいたメディアだけなんですよ。

何が言いたいかというと、トップメディアって「イケてる記事」を書ける人材がいるので、自ずと「イケてるシナリオ」も作れるんですよ。

彼らは相手の感情をスイッチさせるプロで、潜在的なニーズを顕在的なニーズに切り替えるのがすごく上手い。わかりやすく例えるなら、ディスプレイ広告から流入してきた「購買意欲の薄いユーザー」に商品を買ってもらうみたいな。

要は内部に超優秀なマーケターがいるんですよ。そういった人たちの功績が成功事例として「あのツールを入れれば伸びる」っていう形で変に広まったのが業界の裏側。各社こぞってツール導入はしたものの、思うように成果が出ない。当たり前の話なんですけどね。

結局マーケティングスキルの他にも、相手の感情を読み取る能力、信用を得る能力、それらを駆使できる経験値。こういった複合スキルがあって初めて出来上がるわけで、ツールを入れたら解決されるような問題ではないんですよ。

遠藤竜太本当に人材ありきですよね。

改めて考えると、Zealsはコミュニケーションデザインに対する熱量が異常だと思います。それに「本当に良いものにしよう」と考えている人材をきちんと採用できている部分も大きいのかなと思いますね。

面白いのが、うちの会社で活躍してるコミュニケーションデザイナーはIT出身ばかりではないんですよ。接客業のエース、美容部員、ジュエリー販売員みたいなITから縁の遠かった人たちが活躍しています。

これは僕らの中で1つの成功スキームであり、今では「接客員属性も活躍できる」みたいな考え方が社内にありますね。

そして何より、僕らはビジョンに熱い会社で、そのビジョンを引っ張りながら社員同士がすごい熱い想いで向き合ってるんですよ。例えば、ノウハウも自分だけのものにせずチームで共有するなど、お互いの切磋琢磨に繋がっている。ある意味、Zealsが成果が出し続けているのも、そういう表に見えない企業カルチャーがあるからだと思ってます。

優秀な“マーケター”という属性は存在しない。

田内
田内広平本当に人材って分からないですよね。僕らも人材絡みだと面白い話があって、大手求人メディアと「優秀なマーケターを発掘しよう」みたいな名目で採用にまつわる取り組みをしたことがあったんですよ。

いわゆる適性診断みたいなシステムなんですけど、うちの社員に回答してもらって傾向を図ったんですね。僕が予め格付けしておいた「優秀なマーケターリスト」と診断結果を照らし合わせてみたところ、セールスがイケてる人材と属性が全く一緒。ドンピシャなんですよ。

つまり、優秀な“マーケター”という属性はそもそも存在しない。セールスが得意な人材は、みんな優秀なマーケター候補になるわけですよ。それに僕の経験則からしても新卒からマーケティング1本の人材と、他業種を経験してる人材だと後者の方が圧倒的に優秀ですからね。

遠藤竜太なるほど。マーケターって特殊な職業だと捉えられがちですが、実際はセールスと適正が一緒なんですね。

でも、今の話はかなり納得感がありました。最近、執行役員として入社した人がセールス、PR、マーケティング、どれをとってもプロフェッショナルなんです。

ちなみに、その方はサイバーエージェント15年戦士の重鎮だったんですけどね(笑)

田内広平なるほど、誰だか分かりました(笑)

CRM推進を妨げる要因、市場における課題とは。

遠藤氏と田内
田内広平それこそサイバーエージェント、または他の代理店でもいいんですけど、広告代理店ってCRMをどうのように捉えているんですかね?

遠藤竜太僕の所感ですが、新規獲得の予算に比べると、CRM予算は少額で儲からない。ゆえにリソースがなかなか割けないという事情があると思います。

田内広平それは同意見ですね。

まずマーケティング予算の大半は広告に使われるので、必然的に代理店が主導権を握ることになるじゃないですか。代理店側も新規獲得の方が分かり易いし儲かるのでCRMはやらない。だから市場的にもCRM予算が確保しにくくなる。

これは僕らがやってるCVR改善も同様で、代理店は収益に直結し、なおかつ非労働集約的なものを好むから自分たちでは注力しない。だから彼らからすると僕らは「自分たちの許容CPAを上げてくれる人たち」なんですよ。

でもCRMは本質的にマーケティングする上で不可欠かつ重要。本当は代理店側にも、もうちょっとCRMの本質的な部分に近づいて欲しいなっていうのはありますけどね。

LINEのCRM活用状況について。

遠藤氏
田内広平遠藤さんはLINEのCRM活用にも精通していると思うのですが、市場感を見てどう思っていますか?

遠藤竜太そうですね。やはり一番に思うのが「みんなLINEやろうよ」ってことですかね。というのも、LINEでCRMをきちんとやり切れている会社ってほとんどいないんですよ。

もちろんメルマガやダイレクトメールのような既存のCRMも大事なので、それはそれでこれまで通りやれば良いと思います。しかし、一向にLINEにだけは手を出さない風潮がある。恐らく単純にLINEでCRMをやり切るのが面倒だからだとは思うんですけどね。

田内広平確かにまだ型として確立されていない感じはありますね。とはいえLINEでもステップメールと同じことが簡単に出来るわけだし、そこまで大きな違いはない。むしろ今はLINEの方がリーチ力を持っていると思いますけどね。

遠藤竜太そうなんですよ。チャネル・開封率・リーチ力を考えたら、どう考えてもLINEはやるべきです。

LINEがセールスツールとして認識されてない。

田内広平LINE公式アカウント(旧LINE@)って、いわゆる「ビジネスアカウント」じゃないですか。つまり、アカウントの用途的にもメルマガ等とそう大して変わらない。なのにクライアント側の認識としては属性が「ソーシャル」なんですよ。

FacebookやTwitterのアカウント運用って手間が掛かるし、媒体的にPR・広報の担当者が触るものってイメージじゃないですか。こういう固定概念みたいなものが染み付いている気がします。

遠藤竜太それはあるかもしれないですね。LINE公式アカウントを「セールスツールとして使おう」と話しているのに、PR・広報の文脈が出てきて「社内で実施する」みたいな話も聞きます。

田内広平メルマガの外注、DMの外注ってそれなりに目にする反面、LINE公式アカウントの外注ってあまり見ないですよね。

ずっと疑問だったんですけど「ソーシャル属性」として認識されていると仮定すれば、自社のSNSアカウント運用を外注する会社って少なくて当然ですよね。

だから結局、普段から使ってるコミュニケーションツールとしての「LINE」と、セールスツールとしての「LINE公式アカウント」が別物だという認識があまり無いんですよ。それはCRMを推進する上でもったいないなと思いますね。

LINEはクロスセルに最適だが周知されていない。

遠藤氏
田内広平LINEはクロスセルに最適と感銘を受ける一方で、「なぜこんなにも周知されていないんだ?」と落胆に近い感情も持っていたりもするんですよね。

遠藤竜太とういうのは?

田内広平例えば、ECサイトのサンクスページでLINE公式アカウントのユーザーを集客したとするじゃないですか。

ここにいるユーザーは少なくとも購入済みのユーザー。つまり「F1層」ですよね。この時点でクロスセルに最適なことは分かるし、なんなら全員ロイヤルカスタマーになる可能性もあるわけですけど気付けない。

機能的な話で言えば、APIを組めばLINE上で購入完了まで持っていけるのにそれすらやらない。理由は「良くわからないから」といった内容。「調べれば情報は出てくるのだから最低限のことはやろうよ」と本気で思います。

遠藤竜太なるほど。LINE公式アカウントの仕組みも一定の要因になっている気がします。無作為に集客すると、本来大切であるはずのF1ユーザーが埋もれて軽視されがちですからね。

RFM分析
※Recency (直近いつ)/Frequency(頻度)/Monetary(購入金額) 引用:通販CRMラボ

田内広平埋もれますよね。とあるクライアントのLINE公式アカウントに数十万人のユーザーが居たんですけど、なぜこのブランドにこれだけのユーザーが集まっているのか疑問に思っていました。

話を聞いてみると、クーポンやスタンプをばら撒いて集客をしていたようで、結局のところ数十万人のユーザーが集められても、商品に興味を持ってくれるユーザーは少なかったというオチです。

遠藤竜太ひどい場合、LINEからサイトに送客するにしても効果が低かったり、そもそも遷移してくれなかったりしますからね。

田内広平僕らはサイト改善の一環として、LINEに訪れるユーザーの最適化をやっているのでよく分かるんですけど、「オーガニック」「ペイド」「LINE」など参照元によってサイト内でのユーザーの動き方も全然違うんですよ。

もちろんサイトそのものを変更して改善を図ることは大事でなんですけど、訪れるユーザーの正規化もかなりCVRに影響する部分なのでどちらも疎かに出来ないですよね。

要は「マーケティングは、入りから出まできちんと押さえるべき」という話で、部分最適だけでは効果は最大化できないと思っています。

LINEにおけるCRM施策。成功への戦略とは。

田内
遠藤竜太ちなみに、サイト改善はどのくらいの期間でどんな風に変わるもんなんですか?

田内広平過去の事例で言うと、1年間やってCVRが2倍になったとかありますね。

遠藤竜太凄いなぁ。普通に2倍とかあるんですね。

田内広平厳密には"条件付き"って感じですけどね。サイト改善はABテストを繰り返すわけですけど、短期間で成果を狙う場合、僕らが出す施策スピードに制作側が合わせてくれないとダメなんですよ。なので「制作が追いつくのであれば、1年で出来ます」みたいなところはあります。

遠藤竜太なるほど、データ分析の文化自体は各社に浸透しているんですか?

田内広平正直、あまり浸透していないように思います。基本的にデータ分析のディレクションをできる人がいないですし、そもそも社内でABテストの経験がないところが大半ですね。

それこそCRM施策もLINE施策も全てはデータを見るところから始まるんですよ。でも、結局みんなツールはあっても、データを見ることができないのでスタート地点に立つことができないのが実情ですね。

遠藤竜太なるほど。LINEをデータ分析すると具体的にどういう事象が見えてくるんですか?

田内広平そうですね。すごく簡単な例で言うと、A~Dページがあった時に「どのページをLPに設定するとCVRが高いのか」「4種テストを実施しましょう」「結果、Cページでした」「ではCページはLINEから来るユーザー向けにページの設計を強化しましょう」といった感じですね。

※LP:Landing Pageの略。ユーザーが一番最初に訪れる(訪れた)ページのこと。

これは別に高度な話ではなく、少し調べれば誰でもすぐに分かる部分だと思います。それでも「データ分析の経験が無いです」とか「わからないです」という声が多いので、日本企業は「データ分析における感覚がまだまだ弱い」と感じる部分がありますね。

ちなみに、僕らがやっているのは更に発展させたもので「この情報を見た後に、Aページに着地して、その後に色々回遊して、この間にBページとCページを見たユーザーのCVRが高い」みたいなところですね。

遠藤竜太確かにこういったデータ分析の感度はあまり無いかもしれないですね。

データ分析から見える「LINEの特性」とは。

遠藤竜太LINEの特性といった部分もデータ分析から分かったりするんですか?

田内広平そうですね。LINEの主要導線は「配信」と「リッチメニュー」じゃないですか。CV比はだいたい配信2割、リッチメニュー8割なのですが、こぞって配信の方にフォーカスしすぎだと思います。配信は、あくまでユーザーをリテンションさせる機能として考えるべきなんですよ。

配信回数が多いほど、ユーザーにブロックされるじゃないですか。でも、ブロックは悪いことではなく、ユーザーの客質を高めていく過程で必要なことだと思っています

例えば、週2ペースで配信したとしてもブロックする人はいます。たかが週2ペースで、かつお得情報の配信ですらブロックの対象となるのであればもう仕方がない。

逆に配信を続けても残ってるユーザーは、そのブランドが好きな良質ユーザーで、なおかつロイヤルカスタマー候補なんですよ。実際に「配信を見た回数が増える度にCVRが上昇する」という傾向もデータで出ているんですよね。

遠藤竜太かなり面白いですね。要するに、こちら側でベストシナリオを規定し、それに乗っかるか乗っからないかでユーザーの属性を判断するって感じですよね。

田内広平そうですね。ただチャーン率の指標は30%程度に設定するべきですかね。それ以上は配信内容に問題がある場合もあるので、抜本的な改善が必要なケースもあります。

遠藤竜太なるほど。リッチメニュー関連はどうですか?パネル枚数の違いでどう変化するのかなど。

田内広平リッチメニューのパネル数は商材によって正解が異なりますね。ベスト枚数が2枚の場合もあれば、4枚の場合もあるので明確に定まってはいないのでテストで答えを探すって感じですね。

ただし、遷移先をLPにすると数字が悪いことが多く、LINE公式アカウントからの遷移先として好ましくないことは分かっています。

※LP:広告専用に作られた縦長1枚のWebページのこと。

遠藤竜太確かに、良質なユーザーであればブランドのことは熟知してるし、アクティブだからLPのように動きが強制されるページは好まないかもしれないですね。

田内広平ですね。LINE経由でサイト流入するユーザーって、検索や広告から入ってくるユーザーと動き方が全然違いますからね。極端な話ですけど、LINEから遷移してきたユーザー専用のサイトがあっても良いとさえ思っていますよ。

ユーザーセグメントが成功のカギ。

遠藤氏
遠藤竜太やはり「ユーザーセグメントの重要性」に再度気付かされますね。

それこそ僕らが「ユーザーストーリー配信」と呼んでいる配信手法があるのですが、簡単に言えばステップメールの複雑版。ここでは初回訪問時にヒアリングした内容でユーザーセグメントを切り分けるんですよ。

例えば、スキンケアブランドの場合、まずユーザーから「肌の悩みは何か」という問いをチャットボットを通してヒアリングする。その上で、ユーザーセグメントを切り分け、セグメント毎に最適な会話を配信するといった方法なんですよね。

その後は、「1日後にコンテンツAを配信」「3日後にコンテンツBを配信」「商品の到着後、オンボーディングコンテンツを配信」と順序立てたストーリーに沿って配信を掛けていくと。

僕らのチャットボットは、ユーザーセグメント毎に分岐パターンを逐次つくりながら、ゴールデンルートにはめ込んでていくことに注力している分、結果が着実についてきますからね。

田内広平確かにユーザーニーズにしっかりハマっているイメージが沸きますね。

セグメントの切り方については色々あると思うんですけど、いずれにしても「どこからユーザーを集めてくるか」が重要だと思います。もちろんサンクスページから集めてくるのがベストだと思いますけど、母数に限界があるわけじゃないですか。

だから、もう少し潜在層が集まる媒体を別で探すべきだし、そういったユーザーに「どうやって商品の魅力を伝えるのか」みたいな話もある。でも、これがシナリオだし、マーケティング設計じゃないですか。

正直、これは難易度が相当高い話だとは思いますけど、これを形にした会社が今後一番強くなるんだろうなと思いますね。

まあ...僕らはやりたくないので、どこかの会社がやってくれるのを期待して待っているんですけどね(笑)

ロイヤルカスタマー候補のユーザープールを作りたい。

田内広平そういえば、実はZealsさんにやって欲しいなと思っていたことがあるんですよ。

遠藤竜太ほう、何でしょうか?

田内広平「開封」もしくは「クリック」したユーザーをデータベース上でラベル付けして、該当者だけを集めたユーザープールを作りたいんですよ。

これは単純にCVRが高いであろうユーザーが集まったプールになるので、めちゃくちゃ特化的なプロモーションを仕掛けることができると思うんですよ。例えば、新商品はそのプールに率先して配信するとか。

遠藤竜太そういうデータは、全て残っていますよ。開封データやタップデータは全てUIDと紐づけてログを残していて、それこそ「〇回開封した人」とか「〇回アクションした人」みたいなセグメントを作って配信することもできます。

田内広平それはかなり熱いですよ。ロイヤルカスタマーに対して配信を掛ける方が効果が良いのは当然ですからね。

それこそ商品ラインアップが多い会社だと、中には挑戦的な商品もあるじゃないですか。そういった商品はロイヤルカスタマーの方が買ってくれるはずなんですよ。

遠藤竜太確かにそうですよね。それにロイヤルカスタマーの場合、普通の商品ラインアップは既に知っているので、そこまで興味が沸かないですもんね。

田内広平それこそZealsのサービスは属人性が高い領域で、クリエイティビティを発揮して付加価値を付けていますけど、先のステージとしてあるのがデータベース提供だと思うんですよね。

遠藤竜太そうかもしれないですね。やはり、僕らのチャットボットデータを欲しがる方もいますからね。

田内広平既に僕らが欲しいですからね。正直、活用方法はいくらでも考えられると思います。

LINE公式アカウントは金脈。

田内
田内広平LINEの特性とか攻略法は色々あると思うんですけど、結論として言えるのが「LINE公式アカウントって一般的に思われている以上にかなりポテンシャルがある」ってことですね。

それこそLINEが配信媒体として確立する前の時代はリタゲなり、リスティングなり、ネット広告でもある程度「ユーザーセグメントを切って良質な顧客を狙おう」みたいな風潮はあったと思うんですよ。

でもネット広告からCVしたユーザーは、たまたま目にした広告の文面にテンション上がってCVしただけの場合が多いんですよ。

例えば、先ほど例に出たスキンケアの場合、1回目で美容クリニックAを利用した人でも、美容クリニックBの広告にテンション上がれば2回目はそっちに行っちゃうわけですよ。

遠藤竜太確かに大抵の業界がそうですよね。「俺は、このメーカーしか使わない!」「私は、このブランドしか使わない!」といった話はコアだと思いますし、居たとしても少数派ですからね。

田内広平そうですよね。極端に言えば、従来の広告って千差万別の人の中から、コアユーザーを探し求めて広告費を使っていたわけですよ。その反面、LINE公式アカウントはこれまでの概念が全て壊せるわけですよ。

LINE公式アカウント自体が、ある種のリタゲじゃないですか。もっと言えば、サンクスページから集めたユーザーであれば、購入済みリタゲなので精度も高い。そのユーザープールに配信を掛け続ければ、リテンションに繋がるので他社プロダクトに流れる確率も劇的に下がる。

実際の話、僕らのクライアントにとある大手企業がいるんですけど、広告全体のCPAが大体1.5万円くらい。これに対してLINE公式アカウントだと700円。しかもCV数はLINEの方が多いという。

遠藤竜太え、それは凄いですね。ちなみにLINE公式アカウントのユーザーはどこから集めてきたんですか?

田内広平基本的にはサンクスページから集客していて、LINE公式アカウントには20万人くらいいます。

遠藤竜太なるほど。というか、サンクスページから20万人は相当凄いですね。

LINE公式アカウント運用の肝は、目的を絞ることだと思います。今の話も、結局ユーザープールの質が高いというのはひとつありますからね。

田内広平それはありますね。成功事例を聞くとテンション上がりますけど、実際問題としてLINE公式アカウントの運用は「難しい」と常々思います。

言うのは簡単ですけど、LINEの運用って「企画」「配信設計」「リッチメニュー設計」「導線の最適化」と多岐に渡るじゃないですか。でも、この辺のノウハウを普通の企業は持っていないですからね。

遠藤氏
遠藤竜太確かに、そこまで徹底してやり込む企業って少ないですね。

単純に「LINE公式アカウントで配信している」といった話は聞きますが、「本質的な運用をしている」という意味では皆無かもしれませんね。

田内広平そういった意味でも、LINE含めCRMを完全に内製化するのはお勧めできないですよね。少なくとも自走できるようになるまでは、その手のプロたちを集めるのが吉かなと。

遠藤竜太そうですね。LINE公式アカウントも作るだけであれば簡単だし、配信もやろうと思えば誰でも出来る。でも実際はしっかり作り込めていない時点で機会損失になっていますからね。

加えて、Googleが「Cookie完全廃止」に向けて動いていたり、リタゲを含めたCookie系消滅問題が世界的に話題となっていたりする中で、圧倒的なパフォーマンスを上げるLINE公式アカウントは全ての企業が取り組むべきテーマだと思います。

やり方次第な部分はもちろんありますけど、LINE配信は「リタゲ2.0」とも言えるのではないでしょうか。

株式会社Zealsの公式サイトはこちら

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